年数回のサイクルで、よりきめ細やかな視点から中原中也の世界を紹介します。詩と他のジャンルとのコラボレーションなど、現代に息づく中也を紹介する場にもなります。

企画展Ⅱ(前期)「浅田弘幸展――『眠兎』と中也、そして新作絵本」

【会期】2024年9月26日(木)~2025年1月26日(日)

『I’ll~アイル~』『テガミバチ』(集英社)などの作品で知られる漫画家の浅田弘幸は、初期の代表作『眠兎』(集英社)を始め、中也の作品や人生に啓発された作品を数多く制作してきました。

本展では、中也の詩をテーマにした絵本の出版を記念し、Ⅰ期【9月26日~11月24日】は『眠兎』など中也に関連した作品を中心に、Ⅱ期【11月27日~1月26日】は刊行予定の新作絵本を中心に、浅田の画業を紹介します。

過去の展示記録(2024
年)

特別企画展「中也とランボー、ヴェルレーヌ」

【会期】2024年8月1日(木)~9月23日(月・祝)

中原中也に大きな影響を与えたフランス象徴派の詩人、アルチュール・ランボーとポール・ヴェルレーヌ。中也は17歳のときに彼らの詩に出会い、魅了され続けました。その憧れは中也が詩人として成長していくうえで大きな糧となりました。
ランボーとヴェルレーヌの影響が中也の作品にどのように息づいているのか、また、日本のランボー受容史において輝きを放つ中也の翻訳の魅力に迫ることで、現代においても読み継がれ、多くの人々を惹きつける3人の詩の世界を紹介します。

企画展Ⅰ「ダダイスト中也のノート」

【会期】2024年4月17日(水)~7月28日(日)

16歳の中也が当時住んでいた京都の古本屋で手に取ったのが、高橋新吉の詩集『ダダイスト新吉の詩』です。従来の文学表現と一線を画すダダの詩に魅了された中也は、「ダダイスト中也」を名乗り、新吉の影響が強く感じられるダダの詩をノートに綴るようになります。そのうちの1冊である「ノート1924」が、使用開始から100年を迎えたのを記念し、この度展示を開催します。「ノート1924」の詩篇、『ダダイスト新吉の詩』を通じて影響を受けたダダイスム、当時の中也の暮らしぶりなどの紹介を通じて、中也の詩人としての始まりの姿を追います。

過去の展示記録(2023年)

企画展Ⅱ「中也と短歌」

【会期】2023年10月4日(水)~2024年4月14日(日)

1920年2月、中原中也12歳の時、雑誌「婦人画報」に初めて自作の短歌が掲載されました。その後地元の新聞などに発表の場を広げ、1922年には年上の歌人2人と歌集を刊行するまでになりました。故郷の山口を離れ、詩を制作するようになった1923年以降、短歌作品は数首ほどしか確認できませんが、歌を詠んだ経験は、のちの詩作にも強い影響を与えているように思われます。

本展では、山口の歌壇の人々との関わりを中心に、中也と短歌の関係について探ります。

特別企画展「草野心平と中原中也」

【会期】2023年7月27日(水)~2023年10月1日(日)

「蛙」をモチーフとした詩で知られ、2023年に生誕120年を迎えた詩人・草野心平。

1934年、詩人・草野心平と中原中也は、同人誌「歴程」の朗読会で出会い、以後交友を結びます。中也は心平らが発行した「歴程」の同人となり、また中也が詩集『山羊の歌』の装幀を高村光太郎に依頼する際、仲介したのが心平でした。中也にとって心平は個人的につきあいのある数少ない詩人の一人であり、また互いの詩を高く評価し合う、良き理解者でもありました。

本展では、いわき市立草野心平記念文学館協力のもと、二人の深い交友の軌跡と、心平の詩の魅力について紹介します。

協力:いわき市立草野心平記念文学館

企画展Ⅰ「中原中也と関東大震災」

【会期】2023年4月19日(水)~2023年7月23日(日)

1923年9月1日、マグニチュード7.9の大地震が関東地方を襲います。この関東大震災は未曾有の被害を与え、人々の暮らしや文化に大きな変化をもたらしました。中原中也は京都に住んでいたため被災することはありませんでしたが、2年後に上京し、復興期の東京で生活しました。
2023年は関東大震災から100年目にあたります。
本展では、当時の状況や文学者・中也の周辺人物の被災体験、災害から生まれた文学などを通じて、文学の背景にある震災の影響を探ります。

過去の展示記録(2022年)

企画展Ⅱ「中也、この一篇――「一つのメルヘン」」

【会期】2022年10月5日(水)~2023年4月16日(日)

中也の代表作をじっくりと味わうシリーズ企画、第4回目は「一つのメルヘン」を紹介します。
この作品は「文芸汎論」昭和11年11月号に発表され、のちに中也の第二詩集『在りし日の歌』に収録されました。国語の教科書にも多数掲載され、中也の代表作として人気の高い詩の一つです。
本展では、この詩が書かれた背景や、詩の舞台になったといわれる故郷・山口の風景、特徴的なオノマトペの使い方など、さまざまな角度から作品を読み解きます。

特別企画展「坂口安吾と中原中也――風と空と」

【会期】2022年7月28日(水)~2022年10月2日(日)

坂口安吾と中原中也は、昭和7年に出会い、間もなく交友を深めました。二人はともに雑誌「紀元」の創刊に携わり、また、中也の訳詩集を通じて安吾がランボーを論じるなど、文学活動においても近しい存在でした。

本展では、語学学校アテネ・フランセ、酒場ウィンゾアー、雑誌「紀元」、作家の牧野信一や檀一雄など、安吾と中也の接点となる場所・雑誌・人物を基点にして、二人の交友を紹介します。また、「風」や「空」などのキーワードから、作品の共通点や相違点を浮き彫りにすることで、私たちの心に響く二人の文学の魅力に迫ります。

協力:新潟市「安吾 風の館」

企画展Ⅰ「中也の住んだ町――幼少期」

【会期】2022年4月20日(水)~2022年7月24日(日)

山口で生まれた中原中也は、単身赴任していた父・謙助と暮らすため、生後半年で母・フクらに連れられ、中国大陸の旅順へ向かいます。その後6歳で山口に戻るまで、謙助の転任にともなって、柳樹屯、広島、金沢と移り住み、幼稚園に通いました。
生まれ故郷とは違う土地で育まれた、幼い日の記憶や家族が語った思い出話は、中也の作品に大きな影響を与えたといわれています。
本展では、当時の町の様子や同時代の文学者との接点などにも触れながら、中也の幼少期について詳しく紹介します。

過去の展示記録(2021年)

企画展Ⅱ「雑誌「詩園」――中也・山頭火と山口の文学青年たち」

【会期】2021年9月29日(水)~2022年4月17日(日)

昭和13年、中原中也一周忌を前に、中也の詩を敬愛する山口県内の若い文学青年たちが文芸同人誌「詩園」を創刊しました。同人は和田健、中也の弟・中原呉郎をはじめ、長谷執持、林かほる、矢嶋行隆、村田富久太、福冨忠雄らでした。 彼らは詩の創作に励みながら、誌上に中也の遺稿を載せたり、一周忌に墓参をおこなったりと、中也の顕彰活動を行っていました。また、当時山口に住んでいた俳人・種田山頭火と交流し、山頭火の句や文章も掲載しています。 このたびは、山口県立大学郷土文学資料センター協力のもと、戦時下の山口の文学を支え、中也顕彰の先駆けともなった雑誌「詩園」について紹介します。

特別企画展「書物の在る処――中也詩集とブックデザイン」

【会期】2021年7月29日(木)~9月26日(日)

詩集には美しくデザインされた本が数多くあります。詩人たちは自らの作品世界を表現するために、装幀にさまざまな工夫を凝らしてきました。 中原中也の詩集『山羊の歌』『在りし日の歌』、3冊のランボー翻訳詩集もまた、高村光太郎、青山二郎、秋朱之介らといった、個性豊かな装幀家、出版人の手によってかたちづくられました。それらの佇まいには中也と装幀家それぞれの思いが映し出されています。 本展では、中也と装幀家たちとの関わりや彼らの美意識、そして大正から昭和初期に出版された詩集のブックデザインを紹介します。
監修:カニエ・ナハ(詩人、ブックデザイナー)

企画展Ⅰ「中也、この一篇――「正午」」

【会期】2021年4月14日(水)~7月25日(日)

中也の代表作をじっくりと味わう企画展シリーズ、3回目となる今回は「正午」を紹介します。

本作は副題に「丸ビル風景」とあるとおり、東京駅前に大正12〈1923〉年竣工した「丸の内ビルヂング」が舞台となっています。詩の制作当時、日本最大のオフィスビルであった丸ビルですが、中也は、そこで働く大勢の人々が、昼休みに一斉に外出する様子を、少しおどけた言葉で描き出しています。
本展は「正午」について、作中に出てくる言葉の解説、同時代文学に描かれた丸ビルや東京の風物、制作当時の中也などの観点から、その奥深い魅力に迫ります。

過去の展示記録(2020年)

企画展Ⅱ「中也の住んだ町――鎌倉」

【会期】2020年11月18日(水)~2021年4月11日(日)

中原中也が生きていた昭和初期は、東京に日本初の地下鉄ができるなど、交通網が発達し、鉄道の高速化が進んだ時代でした。
山口では妻と幼い息子とともにガソリンカー(ガソリンで走る鉄道車両)で移動したり、鎌倉ではバスに乗って友人を訪ねたりするなど、様々な交通手段が中也の生活を支えていました。
本展では、当時の時刻表や絵はがきなどの資料を通じ、中也の詩に描かれる鉄道や船といった交通手段の実相を探ります。

企画展Ⅰ「<汽車より速いのはよろしい>――中也の詩と乗り物」

【会期】2020年4月15日(水)~7月26日(日)

中原中也が生きていた昭和初期は、東京に日本初の地下鉄ができるなど、交通網が発達し、鉄道の高速化が進んだ時代でした。
山口では妻と幼い息子とともにガソリンカー(ガソリンで走る鉄道車両)で移動したり、鎌倉ではバスに乗って友人を訪ねたりするなど、様々な交通手段が中也の生活を支えていました。
本展では、当時の時刻表や絵はがきなどの資料を通じ、中也の詩に描かれる鉄道や船といった交通手段の実相を探ります。


過去の展示記録(2019年)

開館25周年記念展 文学表現の可能性【後期】「清家雪子展――『月に吠えらんねえ』の世界」

【会期】2019年11月27日(水)~2020年4月12日(日)

中原中也記念館の開館25周年記念展「文学表現の可能性」の第2弾として開催される企画展で、漫画家・清家雪子氏とその作品『月に吠えらんねえ』を取り上げます。『月に吠えらんねえ』は、講談社「月刊アフタヌーン」201311月号で連載が開始され、今年の9月号で完結したばかりの作品です。日本の近代詩人たちが住む□(シカク:詩歌句)街を中心的な舞台として、萩原朔太郎、北原白秋、三好達治、室生犀星、中原中也など、それぞれの詩人の作品世界をイメージ化したキャラクターを登場させ、作品自体や文学史上の出来事などが融合された世界が展開します。展示では、中原中也をモチーフとしたキャラクター「チューヤ」を中心に、文学表現と清家氏独自の作品世界との関わりを紹介します。

開館25周年記念展 文学表現の可能性【前期】「ムットーニからくり文学館」

【会期】2019年9月26日(木)~11月24日(日)

「自動人形からくり箱」によって唯一無二の作品世界を創り出す美術家・ムットーニ(武藤政彦)氏。小さな箱のなかで、機械仕掛けの人形、音楽、光、作家本人の語り、舞台装置が巧みに絡み合いながら物語を紡いでいくその作品は、見る者の心を強くとらえ、魅了してきました。文学を題材とした作品も数多く制作し、独自の視点と表現手法により、題材となる作品に新たな光を与えています。
本展では、中原中也の詩を題材とした新作(初公開)を中心に、文学をモチーフにした作品を紹介します。いくつもの光と時間が織りなす、「物語のサーカス小屋」をご堪能ください。

特別企画展「富永太郎と中原中也」

【会期】2019年8月1日(木)~9月23日(月・祝)

中原中也は17歳の時、6歳年長の詩人・富永太郎と出会います。フランス詩に造詣が深く、詩や絵画の創作に才能を発揮した富永は、詩人を志す中也に大きな影響を与えました。二人は、互いに惹かれ合いながらも嫌悪が混じり合う複雑な交友を結びます。しかし、富永は病魔に襲われ、二人に永遠の別れが訪れます。

硬質で理知的な散文詩の世界を展開した富永。富永を通してフランス象徴詩を知り、独自の抒情詩を追求していく中也。

本展では、県立神奈川近代文学館所蔵の富永太郎資料を中心に、二人の関係性や詩の特性に迫ります。

企画展「沸騰する精神――詩人・上田敏雄」

【会期】2019年4月17日(水)~7月28日(日)

1枚のハンカチーフ――君はくずれおちた月だ
  愛がなければ
  世界はハンカチーフの廃墟である
    ―上田敏雄「讃美歌のためのアルゴ」(『薔薇物語』)より
 

明治33年、現在の山口県防府市に生まれた上田敏雄は、慶応義塾大学文学部英文科在学中に詩壇に登場、昭和3年に、弟の保、北園克衛と連名で、日本初のシュルレアリスム(超現実主義)宣言を発表します。そして、昭和4年には詩集『仮説の運動』を刊行し、大きな反響を呼びました。その後中断を経て、昭和20年代に詩の発表を再開。昭和57年に81歳で亡くなるまで、新作を発表し続けました。中也とは、昭和6年に入学した東京外国語学校の同級生の間柄で、中也は詩集『山羊の歌』を上田に献呈しています。

本展は、絶えず変化し、常に新しい詩精神によって詩をつくり続けた詩人・上田敏雄の全貌を、貴重な直筆資料の展示を中心に紹介します

過去の展示記録(平成30年)

企画展Ⅱ「文士の肖像――林忠彦写真展」

【会期】平成30年9月27日(木)~平成31年4月14日(日)

山口県周南市出身の写真家・林忠彦の生誕100年を記念し、周南市美術博物館協力のもと、林忠彦の写真展を開催します。 同じ山口県出身でありながら、中也と出会うことはなかった林ですが、小林秀雄、太宰治、坂口安吾ら中也と交友のあった文学者の肖像写真を撮影しています。それらは、『日本の作家』『文士の時代』といった写真集に収められ、林の代表作となりました。写真家がとらえた文士の姿は、いったいどのようなものだったでしょうか。 本展では、中也と同時代の文学者の業績を紹介しながら、林の写真の魅力にせまります。

特別企画展 「大岡昇平と中原中也」

【会期】平成30年8月2日(木)~9月24日(月・祝)

多岐にわたる文学活動により、戦後文学を牽引した作家・大岡昇平。大岡は19歳で中原中也と出会い、以後中也が没するまで交友関係をむすびました。中也没後は中也についての文章を数多く発表。四度にわたり刊行された『中原中也全集』では、すべての編集に名を連ね、中也の詩業の紹介につとめました。本展では、県立神奈川近代文学館所蔵の大岡昇平資料を中心に、大岡と中也の交友と、戦後の大岡の文学活動における中也の位置などについて紹介します。

企画展Ⅰ「中也、この一篇――「帰郷」」

【会期】平成30年4月18日(水)〜7月29日(日)

中也の代表作をじっくりと味わうシリーズ企画、第2回目は「帰郷」を紹介します。この作品は昭和2年末から翌年初め、東京で生活していた中也が、山口へたびたび帰省していた頃に書かれたといわれています。離れてから身を置く〈故里〈ふるさと〉〉は懐かしいばかりではなく、疎外感を抱く場所でもありました。その複雑な思いを、中也はこの詩のなかでどのように表現したのでしょうか。
本展では、中也を育んだ山口の風土や、フランス文学からの影響、音楽との関わりなど、さまざまな角度から作品を読み解きます。

過去の展示記録(平成29年)

企画展Ⅱ(後期)「山口盆地考2018.....吹き来る風が.....」

【会期】平成30年1月24日(水)〜4月15日(日)

中原中也記念館では、コラボレーション企画の後期として、YICAとの展示を開催します。 山口現代芸術研究所(YICA)は、現代アートの展示やワークショップ、レクチャー等を企画・開催しているNPOで、2018年に設立20周年を迎えます。「山口盆地考」は、この街の歴史や文化を自然環境と一体のものとして見つめ直す、YICAからの提案です。サブタイトルは中也の代表作「帰郷」の一節を借りています。「あゝ おまへはなにをして来たのだ」という問いかけに促された表現者たちの作品を見て、皆さん自身もさまざまな風と対話して頂きたい、と願っています。 現代アートは、自由な発想、多様な素材、そして私たちが生きているこの時代と社会に対する深い関心を特徴としています。そこには中也の詩と同じように、つねに新しい感性との共鳴があるのです。

企画展Ⅱ(前期)「コミックのなかの中也」

【会期】平成29年10月4日(水)~平成30年1月21日(日)

本展では、中也や中也の詩が物語に深く関わるコミック―「文豪ストレイドッグス」「文豪失格」「眠兎〈ミント〉」「最果てにサーカス」「含羞〈はぢらひ〉―我が友 中原中也」(展示順)を取り上げ、それぞれの内容と見どころについて中也を中心に紹介します。
同じ「中原中也」でも、作者によってアプローチが全く異なります。コミックを通じて中也および中也の詩の魅力に触れることができる展示です。

特別企画展 詩が生まれた場所へ―中也の見た風景

【会期】平成29年7月27日(木)~10月1日(日)

詩人・中原中也は明治40年に生まれ、明治・大正・昭和の異なる時代を生き、30年という短い生涯を駆けぬけました。
中也の作品は、日常で出会ったさまざまな場所から生み出されています。故郷の景観地・長門峡、都会のカフェー、愛児と行った動物園……。現代を生きる私たちにも共感を呼び起こす中也の詩ですが、中也が実際に見ていた風景はどのようなものだったでしょうか。
本展では、作品の舞台や中也をはぐくんだ「場所」に焦点を当て、当時の風景や時代風潮を紹介しながら、古くて新しい中也詩の世界を探訪します。

企画展I 山頭火と湯田温泉

【会期】平成29年4月19日(水)〜7月23日(日)

山口県防府市出身の自由律俳句の俳人・種田山頭火。昭和7年、山口市の小郡に「其中庵」を構えた山頭火は、そこから頻繁に湯田温泉に通い、温泉にまつわる句をたくさん生み出しました。
昭和13年には、湯田温泉に移住し「風来居」を結庵。生前の中原中也と会うことはありませんでしたが、中也の弟・呉郎や詩人・和田健らと深い親交を結んでいます。
本展では、山頭火と湯田温泉との関係を探り、あわせて中原家との接点にも迫ります。

企画展II 中也、この一篇  「サーカス」

※写真:中原中也 詩集『山羊の歌』

【会期】平成28年9月28日(水)〜平成29年4月16日(日)

中也の代表作をじっくりと味わう企画展シリーズがスタート。第1回目は〈ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん〉のフレーズが印象に残る「サーカス」です。
昭和4年に無題の詩として発表されたこの作品は、のちに昭和9年刊行の第一詩集『山羊の歌』に「サーカス」のタイトルで収録されます。
本展では作品の成立過程や、中也が生きた明治末期から昭和初期にかけての日本のサーカスの歴史など、様々な角度から作品を読み解きます。

過去の展示記録(平成28年)

特別企画展 太宰治と中原中也

【会期】平成28年7月28日(木)~9月25日(日)

作家・太宰治と詩人・中原中也。小説と詩というジャンルの違いはあるものの、二人の作品には、あたかも作者と自分が大事な秘密を共有しているように感じさせる、不思議な魅力があります。
実際に2歳しか年の離れていない二人は、同時代の文学者として「青い花」、「鷭〈ばん〉」、「文学界」といった同じ文芸雑誌に作品を寄せています。お互いを評した文章はほとんど残されていませんが、周囲の人々の証言からは互いを強く意識していた様子がうかがわれます。
本展では、二人の文学における接点を探るとともに、太宰の多彩な小説世界を紹介します。

企画展I DADA 1916→1923 ツァラそして中也

※写真:ダダイスト達(左からアルプ、ツァラ、リヒター)
写真提供:思潮社

【会期】平成28年4月20日(水)~7月24日(日)

第一次世界大戦のさなかにスイスで誕生したダダイズム。「無意味」を旗印に世界中へ波及したこの芸術思潮は、中原中也にも多大な影響を与えました。
2016年はダダイズムが始まってからちょうど100年にあたります。本展では、その発生から、芸術・社会に与えた影響などについて、立役者である詩人トリスタン・ツァラの活動を中心に紹介します。さらに、ダダイズムが中也にどのような影響を与えたのか、詩の鑑賞などを通じて探ります。

企画展II 中也の住んだ町—新宿

【会期】平成27年9月30日(水)~平成28年4月17日(日)

中也は昭和8年より約3年間、東京の新宿・四谷近辺に住んでいました。この間に、結婚、長男の誕生、第1詩集『山羊の歌』の出版、そして長男の死まで、30年という彼の短い生涯の中でも極めて重大な出来事が次々と起こりました。
本展では、新宿・四谷在住の頃の中也にスポットを当て紹介します。

過去の展示記録(平成27年)

特別企画展 萩原朔太郎と中原中也

【会期】平成27年7月30日(木)~9月27日(日)

日本近代詩を代表する詩人として知られる萩原朔太郎と中原中也。朔太郎は中也より20歳ほど年長で、詩集『月に吠える』で口語自由詩を確立した人物として、中也が詩人を志した頃にはすでに詩壇でその名を知られた存在でした。朔太郎と中也は幾度か会合で同席した程度の交流しか持ちませんでしたが、お互いを評した文章からは、それぞれの本質を見抜き、共感を寄せていたことがうかがえます。
本展では、詩のほかに音楽・写真・デザインなどにも才能を発揮した朔太郎の多彩な個性と魅力を紹介するとともに、朔太郎と中也の詩の特性に迫ります。

企画展I 中原中也賞の20年

【会期】平成27年4月15日(水)~7月26日(日)

新鮮な感覚を備えた、優れた現代詩の詩集に贈られる中原中也賞。平成7年に創設されたこの賞が、今年20回目を迎えるのを記念し、中原中也賞の歴代の受賞詩人を紹介します。
本展では、受賞詩集に収録されている作品や受賞詩人によるメッセージを交えながら、現在の活動状況などもあわせて展示します。20人の詩人がつむぎ出す、「今」を生きる詩の言葉。それぞれが持つ豊かな個性と魅力的な詩の言葉を味わってください。

企画展II 下瀬信雄写真展 さやかに風も

【会期】平成27年1月28日(水)〜4月12日(日)

今回の企画展では、山口県萩市在住の写真家・下瀬信雄氏の写真による中原中也の詩とのコラボレーション展示を開催します。
萩市で写真館を経営しながら、郷土の風土や暮らしに目を向けた、独特の作風で知られる下瀬氏が「これが私の故里(ふるさと)だ/さやかに風も吹いてゐる」(「帰郷」より)とうたった中也の心象風景を、繊細な写真の世界で描き出します。
写真の中に浮かびあがる写真家のまなざし、そして中也の詩の世界をどうぞご覧ください。

過去の展示記録(平成26年)

企画展II 中原中也 歩みのリズム―〈僕は街なぞ歩いてゐました〉

【会期】平成26年10月1日(水)~平成27年1月25日(日)

中原中也記念館開館20周年記念事業の一環として、山口情報芸術センター(YCAM)とのコラボレーションにより、中也の詩の新しい楽しみ方を紹介します。
中也は、昼に起床し、深夜まで街中を歩き続け、帰宅したのち本を読んだり、詩を書いたりしていました。中也は日々の生活の中で「歩く」ことを重視し、作品や書簡の中でも多数言及しています。
本展では、中也の生活において特徴的であった「歩み」と、歩き続ける生活の中で宿った詩の「リズム」をテーマに、来館者が詩と身体の両方に向き合いながら、中也の詩の魅力を発見できるような体験型の展示を行います。

特別企画展 中原中也と日本の詩

【会期】平成26年7月31日(木)~9月28日(日)

昭和初期に活躍し、日本の詩史に大きな足跡を残した詩人・中原中也。中也の作品は、没後80年近くたった今でも多くの人に愛されています。中也は、先行する詩人からどのような影響を受け、また、後世の詩人にどのような影響を与えたのでしょうか。
開館20周年を記念した本展では、中也の詩の独自性と魅力について、日本の近現代詩が積み重ねてきた歴史をひもときながら紹介します。

企画展I 中原中也記念館の20年

【会期】平成26年2月16日(日)~7月27日(日)

中原中也記念館は平成26年に開館20周年を迎えます。平成6年2月18日、中也生誕の地である山口市湯田温泉に開館してから今日まで、中也自筆原稿などの資料収集・保存や、さまざまなテーマの展覧会、教育普及等の活動を通じ、中也の業績を広く伝えてきました。
本展では、中原中也記念館の20年の歩みをたどりながら、当館が誇る主な収蔵資料、公共建築100選にも選ばれた建築、ゆかりの方々からのメッセージなどを紹介し、中原中也記念館の魅力をお伝えします。

過去の展示記録(平成25年)

特別企画展 『文学界』と中原中也―1930年代の文芸復興

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【会期】平成25年8月29日(木)~10月31日(木)

「文学界」は昭和8〈1933〉年に創刊された1930年代を代表する文芸誌です。当時の文壇では、《文芸復興》を合い言葉に、。商業的要請ではなく、真に書きたい作品を発表する場を求めていた文学者たちは、編集にまで携わる雑誌として「文学界」を創刊しました。
中原中也は、詩21篇、訳詩2篇、評論2篇を「文学界」で発表し、その詩の多くを第二詩集『在りし日の歌』に収録しました。また、「文学界」に携わった人々には、小林秀雄、河上徹太郎ら中也の友人・知人が多くいます。
本展では、中也の直筆原稿や、「文学界」とその時代にまつわる資料等を通じて、中也と「文学界」の関わりを多面的に紹介します。

企画展 旅する中也—汽車の笛聞こえもくれば

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【会期】平成25年3月27日(水)~8月25日(日)

中也が生きていた時代の人々は、主に汽車や船で旅をしていました。旅行は、今よりもはるかに時間や手間のかかるものだったのです。しかし、中也は様々な場所を旅しています。昭和7年には、詩人で友人の高森文夫と共に宮崎や天草などを巡り、昭和10年には雑誌「紀元」の同人たちと、伊豆大島に一泊旅行へ出かけます。以前住んでいた金沢や京都を再訪することもありました。そういった中で、中也は自身の過去と向き合ったり、旅先での体験を元に作品を作ったりしています。
この企画展では、古い絵はがきや時刻表などを手がかりに、当時の風景を再現しながら、中也の旅に対する思いに迫ります。
「汽車の笛聞こえもくれば/旅おもひ、幼き日をばおもふなり」(「羊の歌」より)とうたった中也。汽車や駅が出てくる作品もあわせて紹介します。

※写真:昼寝をする中也(宮崎を旅行中に高森文夫が撮影)
 (若山牧水記念文学館蔵)

過去の展示記録(平成24年)

企画展Ⅱ「中也の父・謙助」

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【会期】平成24年11月1日(木)~平成25年3月24日(日)

中也の父・中原謙助とは、どのような人物だったのでしょうか。
明治9年に農家に生まれ、苦学して当時最年少の20歳で医師免許を取得し、軍医となります。のちに中原家の婿養子として中原医院を継ぎ、山口・湯田では評判の医者でした。また、短歌をたしなみ、ドイツ語を勉強していた文化人でもありました。軍医学校時代の校長であった森鷗外とも交流があったといいます。しかし、中也が文学に向かうことには反対し、息子の文学的業績を見届けぬまま、昭和3年に51歳で亡くなります。そんな父親を中也はどのように思っていたのでしょうか。
謙助の生涯と、中也の作品に見られる父親像をご紹介します。

特別企画展 中原中也の手紙―安原喜弘との交友

【会期】平成24年8月30日(木)~10月29日(月)

この国の貧しい詩の世界にあって真に詩と身一つになって格闘し咆吼(ほうこう)し、詩を己のうちに顕現しつつ遂に詩のために倒れたこの詩人の苦悶の跡を今辿ることは、詩を作る次代のものにとって極めて意義あることであると考えるのである。(安原喜弘『中原中也の手紙』)

中原中也が書き送った手紙の中で最も多く現存するのが友人・安原喜弘宛の102通です。中也の没後、安原は『中原中也の手紙』を著し、詩人の真実の姿を伝えようとしました。安原に送られた中也の手紙や詩と、それを全身全霊で受けとめ続けた安原の文章からは、単なる友情を超えた壮絶な魂の交流が見えてきます。
中也の手紙や初公開の安原関係の資料を通じて、両者の類いまれな交流の軌跡を紹介します。

企画展I 高橋新吉-ダダイズムと関東大震災

【会期】平成24年4月18日(水)~8月26日(日)

大正12年9月1日、M7.9を記録する大地震が関東地方とその周辺を襲いました。「関東大震災」です。この震災は芸術の分野にも大きな影響を及ぼし、ダダイズムや表現派などの前衛芸術がクローズアップされるきっかけとなりました。
同じ年の秋の暮、立命館中学の3年生として京都に住んでいた16歳の中也は、古本屋で高橋新吉の詩集『ダダイスト新吉の詩』と出会います。中也はこの詩集に心を強く惹かれ、早速自分でも、高橋をまねた詩を書き始めます。
中也・高橋・ダダイズムの結節点である、関東大震災前後の時期を中心に、三者の関わりとそれぞれの展開を紹介します。

過去の展示記録(平成23年)

企画展II 中也の母・フク

【会期】平成23年11月9日(水)~平成24年4月15日(日)

中原フク。詩人を育てた母親とは、どのような女性だったのでしょう。
詩人の母としてあらためてフクの生涯をみてみると、その平坦ではない一生に驚かされます。横浜で生まれ、7歳で父を亡くし、叔父の養女となり、結婚して6人の男児を産み、夫と4人の子どもに先立たれ、101歳の生涯を終えた女性。
本展では、フクの生涯を辿りながら、中也の作品に見られる母親像や、中也没後43年を生きたフクの中也への思いを紹介します。また、本展にて初公開されるフク晩年の映像と、評伝『私の上に降る雪は』にまとめられた音声は、生前のフクを偲ぶことのできる貴重な資料です。

特別企画展 雑誌『四季』と中原中也

【会期】平成23年9月1日(木)~11月6日(日)

「四季」は昭和8〈1933〉年5月に堀辰雄によって創刊された雑誌です。一度中断しますが、昭和9年10月、装いを新たに復活し、昭和19年6月の第81号まで続きました。また、戦後も何度か発行されました。主要な同人としては、堀、萩原朔太郎、室生犀星、三好達治、丸山薫、立原道造、津村信夫、神保光太郎の名が挙げられます。
中也は、昭和8年7月から死去した昭和12年10月まで、ほぼ毎号にわたり作品を発表しました。中也の死後は、昭和12年12月号に追悼特集が出ました。
一度も編集に参加することなく、同人の集まりなどにもあまり顔を出しませんでしたが、中也にとって「四季」は、「文学界」「歴程」とともに、主要な発表の場でした。
この展示では、堀や立原らの直筆資料を通じて、「四季」における中也の位置、また、同人たちと中也の関係を浮き彫りにします。

宮嶋康彦 中原中也に訣別 白と黒の振幅の果てに

【会期】平成23年4月20日(水)~8月28日(日)

風景、花、人、動物などの写真と、小説やエッセイの言葉とが織りなす独自の世界を切り開きながら、たい焼の魚拓採集などの幅広い活動を展開している写真家・宮嶋康彦氏による、中原中也の詩とのコラボレーション作品を展示いたします。
宮嶋氏が中也の詩に出会ったのは高校生の頃。今でも、シャッターを押す瞬間にふと中也の詩句が浮び、ご自身の作品に中也の影を見るそうです。そんな宮嶋氏があえて中也との訣別をはかり、それでも消し去ることのできない中也に改めて出会います。
今回の作品はすべて新作で、プラチナプリントによるものが中心になります。陰影に富んだモノクロの画面に、どんな影がさすでしょうか。

中也が読んだ本

【会期】平成23年1月26日(水)~4月17日(日)

中也はたいへんな読書家でした。「本を読めよ、とにかく読むんだ。(中略) 本を買って呉れなければ家中暴れ廻ってやれ」と小学生の弟に言っていた中也。29歳の日記には「俺は今日迄に五六千冊は読んでゐる」と書いています。
中也の蔵書は、死後形見分けのようなかたちで友人達に渡ったり、生家が火事で焼失したりしたため、残念ながらほとんど失われていますが、当館では中也の読んだ本と同版の本を収集してきました。
また、昨年11月、中原中也宛献呈署名入りの本『悲劇の哲学』をご寄贈いただきました。
今回の展示では、これらの本を中心に、中也の読書とそれが中也に与えたであろう影響などについてご紹介しながら、読んだ本を通して見えてくる中也の新たな側面を探ります。

過去の展示記録(平成22年)

中也の住んだ町 中野・高円寺

【会期】平成22年10月6日(水)~平成23年1月23日(日)

中也は大正14年、東京の中野に暮らし始めます。その後、引っ越しを繰り返しながらも、中野・高円寺近辺に約3年半住んでいました。その間、友人・富永太郎の死、恋人・長谷川泰子との離別といった、悲劇的な出来事が立て続けに起こりました。しかし一方では、生涯を通して交遊を続けることになる河上徹太郎や大岡昇平ら友人たちとの出会いや、代表作「朝の歌」の制作など、詩人として本格的に始動した時期でもありました。
本展では、中野・高円寺に住んでいた18歳から21歳までの中也を中心にご紹介します。また、井伏鱒二らが中心となって結成された文学者の集い《阿佐ヶ谷会》を通じて、中央線沿線の文学者群像についてもご紹介します。

河上徹太郎と中原中也 その詩と真実

【会期】平成22年7月23日(金)~10月3日(日)

河上徹太郎は、日本を代表する文芸評論家、音楽評論家であり、中原中也の友人でした。
山口県岩国の名家出身、中也と同郷にして、評論家としての道を歩みはじめていた徹太郎と、当時まだ無名の詩人・中原中也。若き日々に、突如あらわれ消えていったこのひとりの詩人について、徹太郎はその長い評論家人生のなかで、幾度となく回想し、独自の言葉で語っています。

河上徹太郎、没後30年。このたびの展示では、河上徹太郎という人物の生涯と、徹太郎によって語り継がれる中也の姿を紹介します。

第15回中原中也賞

【会期】平成22年4月21日(水)~7月19日(月・祝)

毎年、新鮮な感覚をそなえた、優れた現代詩の詩集に贈られる中原中也賞。新しい才能を掘り起こす賞として、毎回注目を集めています。今回の受賞詩集は、文月悠光さんの詩集『適切な世界の適切ならざる私』です。この展示では、受賞詩集と詩人の世界をご紹介します。幼い頃の写真や、影響を受けたもの、身近に置いているものや愛用品などを詩人からお借りし、どのような場所から、詩の言葉が誕生したのかを感じていただきます。

過去の展示記録(平成21年)

収蔵資料展

【会期】平成21年12月16日(水)~平成22年4月18日(日)

中原中也記念館は、1994(平成6)年の開館以来、関係資料の収集・保存に努めてきました。この企画展では、普段の展示ではあまりお目にかけることのできない貴重な資料をいくつか公開します。
中也と同時代の詩人である神保光太郎が編み、手書きで作った中也の詩集「帰郷」と「曇天」、現在その所在が2箇所しか確認されていない同人誌「白痴群」第6号、中也が小学生の頃に出版されていた少年向けの雑誌、平成20年にランボー記念館から寄贈された品やその当時の交流の様子などをご紹介します。また、中也の小学生の頃の答案用紙や中也詩集の豆本など、普段は収蔵庫の中で大切に保管されている資料をご覧いただけます。何度もご来館された方にも、初めての方にとっても、より深く中也の世界を知ることができるこの機会をお見逃しなく。

湯田温泉物語

【会期】平成21年9月30日(水)~平成21年12月13日(日)

温泉と文学とは深い関わりをもっています。道後温泉と夏目漱石「坊つちやん」、湯ヶ島温泉と松本清張「天城越え」など、数々の名作が温泉地を舞台にして生み出されてきました。もちろん小説ばかりでなく、温泉地で生まれた詩歌も少なくありません。
600年を超える歴史をもつ湯田温泉もまた文学作品の母体となってきました。趙秩の「温泉春色」(「山口十境詩」)をはじめ、三条実美の和歌や、風来居を構えた種田山頭火の俳句などが有名ですが、他にも様々な作品がつくられています。
そして中原中也。中也は湯田温泉に生まれ、少年時代を過ごしました。中也は15歳の時、合同歌集『末黒野』に「温泉集」と題して自作の短歌を収めています。
この展示では、湯田温泉の歴史を一方に置きながら、中也や山頭火に留まらず、この地で生み出された文学作品を紹介することによって、湯田温泉と文学との関わりを探ります。

特別企画展 月光とメルヘン

【会期】平成21年7月24日(金)~9月27日(日)

〈メルヘン〉という言葉は、古い歴史をもっています。
現在では、やさしい印象の童話的世界や、乙女心をくすぐるイメージをさすことが多いようですが、もとは〈短い物語〉をあらわすドイツ語でした。
中原中也の詩で〈メルヘン〉という言葉が使われているのは、「一つのメルヘン」と「誘蛾燈詠歌〈ゆうがとうえいか〉」の2篇のみです。それ以外にも、メルヘンの世界につながる詩がありますが、そこにはしばしば月の光がさしています。
月光とメルヘン、そこには深いかかわりがあるようです。
中也にとってのメルヘンとはなにか、様々な角度から紹介します。

第14回 中原中也賞

【会期】平成21年4月22日(水)~平成21年7月20日(月・祝)

新鮮な感覚を備えた、優れた現代詩の詩集におくられる中原中也賞。第14回は、川上未映子氏の『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』が選ばれました。芥川賞作家としてすでに名前を知られている川上氏、新しい詩の領域が切り拓かれたと、高く評価されました。
川上氏の世界を、ゆかりの品々とともにご紹介します。また、今までの受賞詩人の近況も展示します。

過去の展示記録(平成20年)

中也の兄弟たち

【会期】平成20年12月17日(水)~平成21年4月19日(日)

中原医院の子供たちは男ばかりの6人兄弟。長男・中也を筆頭に、次男・亜郎(つぐろう、通称・あろう)、三男・恰三(こうぞう)、四男・思郎(しろう)、五男・呉郎(ごろう)、六男・拾郎(じゅうろう)と続きます。亜郎、恰三は中也の存命中早くに亡くなり、その死は兄である中也に大きな衝撃を与えました。
一方、その下に続く思郎、呉郎、拾郎は長兄・中也とは異なる分野において、それぞれに長く活躍します。ジャーナリストとして、医師として、音楽家として――〈詩人・中原中也の弟〉であると同時に、自分自身を生きた彼らの業績をご紹介します。

美と痛み 大和保男の陶と中原中也

炎彩流水文水指

【会期】平成20年10月1日(水)~平成20年12月14日(日)

陶芸作家として萩焼に新たな造形美を追究し続けている大和保男。作陶活動の一方、エッセイや小説などの文筆活動にも精力を傾ける彼が、中原中也の詩の世界とその根源にある芸術観に触れることによって、全く新しい陶芸作品の制作に挑みました。
展覧会タイトルの「美と痛み」は、大和保男が自らの芸術観について書いたエッセイからとられています。展示は彼の陶芸作品と中也の詩、そして自身のエッセイが組み合わされる形で構成されます。言葉による表現と造形による表現が共鳴して独自の美の世界を創り出します。
大和保男も中也も同じ山口の地に生まれ育ち、それぞれの世界を築き上げています。およそ70年の時を隔てて、ふたりの芸術家の魂が触れあい、生み出された陶芸作品をご覧いただきます。

「歴程」と中原中也

【会期】平成20年7月30日(水)~平成20年9月28日(日)

昭和10年に創刊し、現在も発行を続ける同人詩誌「歴程」。中原中也は創刊時より同人に名を連ね、10篇の詩と2篇の評論を発表しました。中也を「歴程」に誘ったのは詩人の草野心平です。心平は、時代に先んじて中也の詩を深く理解し、その才能を認めていました。展示では、心平と中也の出会いと交友、「歴程」創刊までの紆余曲折、高橋新吉、宮沢賢治、尾形亀之助ら個性的な同人たちと中也との関係など、さまざまな観点から、「歴程」という場に集った若き芸術家群像を紹介します。
なお本展は、いわき市立草野心平記念文学館と仙台文学館との協力関係のもとに開催します。

第13回 中原中也賞

【会期】平成20年4月23日(水)~平成20年7月27日(日)

新鮮な感覚を備えた、優れた現代詩の詩集におくられる中原中也賞。次々と新しい才能を発掘しています。2月16日に選考会で決定した、第13回受賞詩集『グッドモーニング』(思潮社)とその作者最果タヒの世界を、ゆかりの品々とともにご紹介します。また、受賞後に活躍されている第12回までの受賞詩人の近況も展示します。

過去の展示記録(平成19年)

中也の住んだ町 京都

【会期】平成19年12月19日(水)~平成20年4月20日(日)

「大正十二年春、文学に耽りて落第す。」
                (「詩的履歴書」より)

中也16歳。ひとり京都・立命館中学校へと転入した中也は、その地で目まぐるしいほどの新たな出会いを経験します。古本屋で見つけた一冊の詩集、年上の女性との同棲、異国の香りを漂わす洒落た詩人、数多の引越、奇妙な綽名「ダダさん」。後に上京するまでたった2年の間に、彼の「詩的履歴」を大きく揺るがす数多くの出来事がありました。
本展では、16歳の中也が歩いた京都の町を、様々な資料で紹介します。

私の好きな中也の詩

【会期】平成19年9月27日(木)~平成19年12月16日(日)

生誕100年、没後70年を経てもなお多くの読者に読み継がれている中也の詩―みなさんは、どの詩を、どんな時に、どんなふうに読んでいるのでしょうか。
この度の企画展では、アンケートによる好きな詩のランキング、中也や好きな詩への思いを綴ったメッセージ、書・写真・イラストなどさまざまなかたちで、中也ファンのみなさんの思いを中也の詩とともに展示します。
その他にも、生誕90年の時に作成された『天使の手帖~私の好きな中原中也の詩一〇〇〇人アンケート』の内容紹介、また、中也生誕の地・山口のみなさん、中也終焉の地・鎌倉のみなさん、生誕百年祭が催される北九州市や福島市など他の街のみなさんのメッセージや作品も、随時特設コーナーで紹介します。

小林秀雄と中原中也

【会期】平成19年7月25日(水)~平成19年9月24日(月・振休)

中原中也生誕百年を迎えた平成19(2007)年、中原中也記念館では特別企画展「小林秀雄と中原中也」を開催いたします。中原中也を語る上で欠かせない友人、小林秀雄。小林と中原の関係は、大岡昇平をはじめ、これまでも多くの人々によって語られてきました。しかし、展示の主題として二人の関係を扱うのは初めてになります。本展では、貴重な資料を一堂に集め、日本を代表する評論家と詩人との交流を、様々な資料を通じて紹介いたします。

収蔵資料展

【会期】平成19年5月30日(水)~平成19年7月22日(日)

普段の展示ではあまりご紹介することのない、記念館収蔵の貴重な資料を展示いたします。
このたび大江健三郎氏より寄贈を受けた、渡辺一夫宛署名入りの『ランボオ詩集』をはじめ、中原中也が所持していた草野心平や瀧口修造といった同時代文学者たちの名刺、中也の作品を掲載した雑誌「青い花」や「日本歌人」などを関連資料とともに展示いたします。
名刺からは、中也の意外な交友関係がうかがえます。
また、「青い花」は太宰治が中心となって創刊されましたが、創刊号のみで廃刊となった珍しいものです。中也は太宰から声をかけられ、同人となり詩を掲載しています。

第12回 中原中也賞

【会期】平成19年4月17日(火)~平成19年5月27日(日)

第12回中原中也賞は、須藤洋平氏の第1詩集『みちのく鉄砲店』が受賞しました。展示では『みちのく鉄砲店』と、その作者である須藤氏の世界を、須藤氏の愛用品、影響を受けたものなど、詩人の個性や特徴が浮かび上がるような品々を通して紹介します。
また、過去11回の受賞詩人の昨年1年間の活動の紹介と最新作(書き下ろしを含む)を展示、また各氏に「百歳の中也へのメッセージ」と「好きな中也詩3編」をお尋ねしていますので、それも紹介します。

過去の展示記録 (平成18年)

日本のダダ

【会期】平成18年12月20日(水)~平成19年4月15日(日)

ダダは、第一次世界大戦中の1916年、スイスのチューリッヒに集った芸術家たちが始めた反芸術運動です。ダダはこの世の規範や価値観、意味という意味全てを否定・解体し、ヨーロッパの芸術界を喧噪と狂乱の渦に巻き込みました。ダダは世界各地に広まり、日本の詩人や画家たちにも多大な影響を与えました。中原中也も影響を受けた一人です。本展では、中也のダダ詩ノート「ノート1924」や、当時の詩集や雑誌などを展示し、日本のダダとは何か、そして中也がダダとどのように関わったのかを追います。

中原中也・詩の情景/絵画の情景 あゝ?―山根秀信

タイトル:冬の長門峡
2006年制作 30cm×30cm
キャンバスに油彩

【会期】平成18年9月27日(水)~12月17日(日)

静かな作風で知られる山根秀信氏とのコラボレーション企画。中也の詩のタイトルや題材などと関連した油彩画と水彩画を、展示ケースを使ったインスタレーションとともに展示します。
中也の抒情的な、けれど自身の生と死を見つめる中に紡ぎだされるリアルな詩の言葉と、山根氏の抒情を排し無機質で表層的な映像としてのイメージの絵画…。この2つを対比的に展示することで、世界と私達との間に様々なメディアが介在する今日を、リアリティーの希薄な、空疎な現実として表現します。

青山二郎と中原中也

【会期】平成18年7月26日(水)~9月24日(日)

青山二郎と中原中也の出会いは昭和6年。中也は昭和8年の結婚後、彼の住む花園アパートに引越し交遊を深めます。彼のもとには文学者をはじめ多彩な人物たちが集い、その交遊圏は中也の詩的活動の基盤となりました。中也が最も信頼を置いていた人物の一人であり、詩集『山羊の歌』『在りし日の歌』、創元社版『中原中也全集』の装幀にも関わった青山二郎とは、一体何者でしょうか。
青山二郎は明治34年6月生まれ。中学時代から絵画や陶器に親しみ、のち柳宗悦、浜田庄司らの民芸運動に関わります。また雑誌「山繭」の石丸重治を通じて小林秀雄、永井龍男を知り、さらに河上徹太郎、大岡昇平などの文学者たちとも交遊。その独自の美意識と人間観は、後年の知人宇野千代、白洲正子らに至るまで多くの人々に影響を与えました。
陶磁器を通して培った審美眼で文学や人間をも見つめた青山二郎。陶磁器の図録の編集や美術評論、文学作品や絵画の創作、書物の装幀など、彼の多彩な活動を遺品とともに紹介しながら中也との関わりを探ります。

第11回 中原中也賞

【会期】平成18年4月18日(火)~7月23日(日)

第11回中原中也賞の受賞詩集『音速平和 sonic peace』と作者水無田気流さんの世界を、その個性や特徴が浮かびあがるような品々を通して紹介するとともに、過去10回の受賞詩集とその詩人の受賞後の活躍を紹介しながら、中原中也賞の歴史を振り返ります。
この展示のために、水無田さんからは自作解説や書き下ろしエッセイとプロフィール、歴代の受賞者のみなさんには「受賞後この一篇とそれについてのコメント」「最近の活動」を寄せていただきました。第9回受賞者の久谷雉さんからは書き下ろしの詩が届いています。

5月31日からは一部を展示替えし、『音速平和 sonic peace』の3つのパートとその代表作「電球体」「シーラカンス日和」「音速平和」を水無田さん自身が解説するコーナーを設けています。

嘉村礒多

【会期】平成18年2月1日(水)~4月16日(日)

嘉村礒多(明治30年~昭和8年)は、山口市仁保生まれの作家です。代表作に「業苦」「崖の下」「途上」などがあります。礒多は昭和初年代の文壇において非常に高い評価を受けました。
中原中也も友人宛の書簡に彼の小説を絶賛する言葉を残しています。しかし、近年その名は埋もれつつあります。本企画展は、新発見の作品「姉の手紙」や自筆書簡など、貴重な資料を一堂に集め、嘉村礒多の全貌を明かにします。

過去の展示記録 (平成17年)

中也と流行歌

【会期】平成17年9月28日(水)~平成18年1月29日(日)

聞き覚えのある歌の一節をふと口ずさむ、皆さんそのような経験ありませんか。中原中也もまた流行歌を口ずさんだ一人です。ときに中也は吸収した歌詞を新たな形で作品に生かしました。流行歌の持つ口ずさみやすさは中也の詩にも通じるものです。
今回の企画展では、中也が聴いた流行歌や関連する中也の作品を、当時のSPレコードや楽譜とともにご紹介いたします。

中原中也と西洋音楽

【会期】平成17年7月27日(水)~9月25日(日)

詩人中原中也は音楽を愛好し、とりわけ西洋音楽に深い関心を寄せていました。音楽団体「スルヤ」をひとつの磁場として、諸井三郎、内海誓一郎ら作曲家や、小林秀雄、河上徹太郎ら音楽に造詣の深い評論家と交遊した中也は、自らの詩を歌詞として諸井らに提供し、西洋音楽に関する評論を書いています。こうした活動を通じて残された中也の詩は音楽性に優れている点にひとつの特徴をもっています。
昭和初期の日本に紹介されていた西洋音楽と中原中也の詩における音楽性との関わりを、音楽資料と作品とを通じて明らかにしていきます。

若林佳子押し花アート原画展 中原中也-花と言葉の詩画集-

【会期】平成17年6月1日(水)~7月24日(日)

NHK「おしゃれ工房」に講師として出演する、山口県出身の若林佳子さんによる押し花原画展です。今回は『花と言葉の詩画集 中原中也』(ポプラ社)を中心に、童話、詩画、NHKみんなのうた(セル画)など押し花で制作した原画や、植物の花や、葉や茎などを乾燥させてコラージュした押し花アート画を展示します。

第10回中原中也賞

【会期】平成17年4月19日(火)~5月29日(日)

第10回中原中也賞は23歳の詩人三角みづ紀さんの第1詩集『オウバアキル』が選ばれました。この企画展では、三角さんとその詩の世界をご紹介します。また、過去の受賞者のその後の活動状況や、中原中也賞正賞の英訳詩集の出版についてもご紹介いたします。

河上徹太郎

【会期】 平成17年1月26日(水)~4月17日(日)

音楽批評から出発して文芸批評の開拓者となり、岩国に郷愁を感じていた徹太郎の多彩な評論活動と功績を紹介致します。

過去の展示記録 (平成16年)

文学サロンとしての酒場

【会期】平成16年10月14日(木)~平成17年1月23日(月)

中也は、どんな酒を好み、どんな文学者たちと、どんな議論をたたかわせていたか、また、それは中也の詩にどのように反映しているのかについて紹介します。

特別企画展 宮沢賢治と中原中也

【会期】平成16年7月 28日(水)~10月11日(月)

本年度は、中也が早くからその才能を高く評価し、詩のみならず思想にまで深い影響を受けた宮沢賢治を取り上げました。

続・中也の書

【会期】平成16年5月26日(水)~7月25日(日)

万年筆やペンで書かれた中也の原稿やノート、書簡や日記などに焦点を当て、その筆跡から詩作がどのようになされていたのかをご紹介いたします。

第9回中原中也賞

【会期】平成16年4月20日(火)~5月23日(日)

第9回中原中也賞は19歳の詩人久谷雉氏の第1詩集『昼も夜も』が選ばれました。この企画展では、久谷氏とその詩の世界をご紹介します。
また、過去の受賞者のその後の活動も展示いたします。

中也の書

【会期】平成16年2月22日(日)~4月18日(日)

小学校時代の習字から晩年の「冬の長門峡」の草稿まで、毛筆で書かれた書に着目し、そこに現れた詩人の魂の遍歴を紹介しました。