【終了しました】「山口お宝展」特別展示
- 2017年10月04日
- 展示案内
2017年10月4日(水)~10月29日(日)
〇中原中也筆小林秀雄宛封書(1926〈大正15〉年11月29日)
中原中也記念館では新たに収蔵した中原中也の手紙を初公開いたします。
1925年3月、18歳の中也は、恋人の長谷川泰子と共に上京し、新生活を始めました。
その際にいち早く友人となったのが小林秀雄です。現在では日本の文芸批評の祖とも称される小林ですが、当時は東大の学生でした。
中也と泰子は小林の家の近くに住み、交友を深めました。出会いから約半年後、泰子が小林のもとに去るという出来事により、二人の交友は一時途絶えます。しかし、中也が小林へ送った手紙の日付から、翌年11月には交友が復活していたことがわかります。
この度展示する手紙は、その頃書かれたうちの一通です。内容は近況報告が主で、当時の中也の生活ぶりがうかがえます。また、島崎藤村の随筆を読んで、〈藤村て、まあ嫌な奴だ〉と率直な感想を伝えたりもしています。
中原中也と小林秀雄という偉大な二人の文学者の若き日の交流を直に感じられる大変貴重な資料です。
〇小林秀雄宛中原中也献呈署名入り『山羊の歌』
詩集『山羊の歌』は中原中也の第一詩集であり、生前発行した唯一の詩集です。1934〈昭和9〉年に刊行されたこの詩集は、構想から刊行までに7年を費やしました。1932年には資金を調達するために予約出版を計画し、予約者を募集しますが、十数名しか応募がないため、仕方なく母親から資金援助を仰ぎ、印刷を開始します。その後2年の歳月を費やし出版元を探しますが、引き受けてくれる出版社がなかなか見つかりません。1934年、小林秀雄の紹介により文圃堂書店が版元に決まり、ようやく刊行されました。
この度展示する小林秀雄宛献呈署名入りの『山羊の歌』は、中也にとって長年の念願だった詩集刊行を援助してくれた小林へのお礼の思いがこめられた詩集といえるかもしれません。
中原中也記念館では昨年度、所蔵資料の一部について修復と劣化防止の処理を行いました。この詩集もそのうちの一点です。修復後としては初めての公開となります。